クダンクラムは神からの贈り物。電気と引き換えにはできない!

インド原子力発電公社は最近、法廷での供述書でアブドゥル・カラム博士のことばに言及した。「クダンクラム原発は神のプロジェクトだ。2030年には5万メガワットに達すると考えられるインドの電力需要を満たすだけの発電が可能になる。これは、必要なプロジェクトだ」ということばだ。

 ここイディンタカライ村、クダンクラム原発に最も近い村において、地元の女性たちがクダンクラムについての考えを分かち合った。ここで語られたことは一切報道されることはなかったが、平和と調和に関する長年にわたる思索に彩られたものとして、歴史の深層に残ることになるだろう。

 9月10日の衝突の際に、低空飛行する飛行機の接近によって引き起こされた事故で1人の男性が亡くなった。シェラマさんは、その男性の姉である。「この土地と海は私たちのもの?それらを私たちに与えたのは政府なの?ここの砂は神聖なんです。神様からの贈り物です。私たちはもう何代も、ここに住んでいるんです。ここを絶対に離れません」シェラマさんは静かな声で話した。

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 チンナ・タンカムさんは、高齢ながら今年3月には1週間以上にわたるハンストに参加しました。彼女も、夜になってから重い口を開きました。「私たちは、海の子どもです。海で遊びながら大きくなったんです。母なる海が、私たちの暮らしに必要なものをすべて与えてくれるんです。この海を離れては、絶対に生きられません」

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 この2人の女性たちのことばは、その他の多くの女性たちの言葉でもある。数メガワットの電気と直結したカラム博士のことばなどとはかけ離れた、深い意味を持つことばだ。

 

 10歳のシャミリ、この子の発言について今書くことは、すこし不適当かもしれないが。彼女の母親は、9月10日に行方不明となった。そして、トゥリチの留置場で拘束されているのを発見された。そのシャミリは「放射能で汚染された魚がここから輸出されて、どこか知らない他の場所の子どもたちが危ない目にあうかもしれない」と苦悩の思いを話してくれた。

 

 多くの女性たちは、次の世代のこと、そして海や空気への影響を深く心配している。この地域の生態系や環境に関して包括的な調査を全く行わないままに、クダンクラム原発にゴーサインが出される状況の中で、人々はこのように大きな懸念を抱いている。

どうすれば漁師たちが大切にしている魚たちの群れを守れるのか、細かいことはわかっていない。生命が育まれるときに決定的な意味を持つ海の水の温度も、自然が織りなす細やかな温度の変化は人間には計り知れない。魚がたくさん生息するために必要となる食物連鎖のパターンの特徴も、わかっていない。温排水の侵入によって、海洋の食物連鎖における生産者であるプランクトンや藻がたいへんな影響を受けるのではないか。複雑を極める海洋の生態系や自然の営みが破壊される行為が、どうして「神のプロジェクトだから」「安全だから大丈夫です」などという空疎な一言で免罪されるのだろうか。

必要とされているのは、海洋および陸上の生態系に関する包括的な再検討である。クダンクラムという地域は、確かに神からの贈り物である。しかし、それは原発のことではない。この海と土地が、何世代にもわたって人々の生活と文化を育んできたのだ。このプロジェクトを可能にしてきたあらゆる規範や命令を再チェックし、再検討する包括的なプロセスが今こそ必要なのだ。人間が神をもてあそび、将来の世代の命を操作するような現場である原発については、そのプロジェクトを中止するに遅すぎるということはない。クダンクラムを指針としよう。

もし私たちがクダンクラムを「神のプロジェクト」から「神からの贈り物」へと変えることができれば、全世界は数メガワットの電力の代わりに、真の意味での進歩を遂げるだろう。(アニタ・シャルマの記事から抜粋)