ウダヤクマルを守りぬく:クダンクラム住民たちの決断

9月11日の出来事です。
9月10日の弾圧を受けて、これまでクダンクラムの運動をけん引してきたリーダーの一人、ウダヤクマルさんが警察への出頭を決意してその旨を住民たちに伝えました。これ以上住民たちが権力による暴力で痛めつけられることがあってはならないという気持ち、自分が逮捕されてもこの運動が消え去らないという信頼など、さまざまな思いがあったと思います。ウダヤクマルさんは11日の朝に、今日の夜に出頭する、と表明しました。

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しかし、ウダヤクマルさんには100以上のでっち上げの容疑がかけられており、それらの容疑の中には治安妨害罪や国家に対して戦争をしかけた罪、など終身刑が言い渡される可能性のある重罪も含まれています。村人たちは、泣き叫びながらウダヤクマルさんの出頭に反対したようです。怪我をさせられ、住居を壊されても、住民たちには確たる信念があることが感じられます。この1年間、クダンクラムの小さな漁村にしつらえられた簡素な手作りの集会場で寝食を共にした仲間でありリーダーであるウダヤクマルさんを野蛮な警察の手に渡すなど、住民たちにとっては考えられないことだったようです。
老若男女が涙を流しながら出頭を思いとどまるよう叫びながら説得しています。動画はタミル語なので全然わからないのですが、新聞記事などによると人々は「あなたが逮捕されてもよいのは、私たちが1人残らず逮捕された後だ!」「出頭するということは、私たちを置き去りにするということですよ!」など人々のことばの重みが痛感されます。
住民とウダヤクマルさんとの議論は、朝から夕方まで続いたようです。そしてとうとうウダヤクマルさんは、リーダーとして村にとどまることを決意しました。これで当面、ウダヤクマルさんの逮捕はなくなりました。容疑の中に国家反逆罪に相当する重罪(もちろんでっちあげ)があるということから、死刑の可能性も皆無ではないと聞いていたので、遠く日本にいる私ですら気が気ではありませんでした。

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ウダヤクマルさんたちリーダーが逮捕されないよう、これまでも常に数千人の民衆が彼らを文字通り取り囲んで守り抜いてきました。大切な人が権力のほしいままにされないよう、多くの人々が集まって人垣を作って取り巻いて守る。警察も、ウダヤクマルさんの周りにいつも数千人の人々がいるから手が出せない。このような状況が何カ月も続いていることに驚嘆します。非暴力不服従の原点を見る気がします。

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昨年の夏に広島でウダヤクマルさんにお会いしたときの、穏やかで優しい様子が思い出されます。ウダヤクマルさんは私に、「ぜひ子どもと一緒にクダンクラムへおいで。学ぶことがたくさんあるから」と言ってくれました。アメリカの大学で教えていたウダヤクマルさんが、故郷とはいえ南インドの小さな漁村に根を張って、どのようにしてこれほどの素晴らしい運動を作り上げたのかと考えます。その答えの一つが、あのことばの中に隠されているような気がします。

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 現地支援者からのレポートは「ウダヤクマル氏が出頭を思いとどまったことで、クダンクラムにおける大規模で平和的な抗議行動は明日からもさらに強まるだろう」と結ばれていました。今の日本国内で反原発の運動に関わる者にとっても、どうしても学ぶべきことがこの闘いの中にはたくさんあると思います。